増刷しました!&初版脱文のお詫び

「クラシック・ミステリのススメ Part1」、ご要望に応えて増刷致しました。
 品切れで各チャネルにご迷惑をかけておりましたが、暫時在庫復活するかと思います。
 同人誌だというのにここまで愛顧をいただき、関係者一同御礼の言葉もありません。
 今後ともよろしくお願いいたします。

 なお、初版時には村上貴史氏によるエラリイ・クイーン『青の殺人』(原書房)レビューが脱落しておりました。初版をお買い上げいただいた皆様には衷心よりお詫び申し上げます。脱落していた文章を以下に掲示いたします。再版分より当該レビューは復活しておりますが、念のため同じページを2008年冬刊行予定の「クラシック・ミステリのススメPart2」にも再掲する予定です。

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E・D・ホックかエラリー・クイーン、あるいはバーナビー・ロス

 州知事の問題解決屋マッコールが幻のポルノ映画を巡る事件の解決に奔走するという軽ハードボイルド色の濃い展開が、最終的に本格ミステリとして決着する『青の殺人』は、クイーンの長篇としての過度な期待さえ抱かなければ愉しめる一冊だ。
 さて、本書は幼い頃からクイーンのファンだったというホックが、梗概をクイーンに送り、その指導の下に完成させてクイーン名義で発表した作品である。そのせいか、『青の殺人』には、ホックから見た“クイーンらしさ”が様々なかたちで表現されていて興味深い。まず、一連のライツヴィルもののように地方都市そのものを描いた点や、『ダブル・ダブル』と共通する「五月十一日火曜日」といったシンプルな目次、作中で重用されるアナグラムなどにそれが感じられる。また、ウーマンリブ運動をミステリの構成要素として取り込んだ点も、クイーンによる赤狩り批判のミステリ『ガラスの村』の影響として読める。最後に明かされる“犯人”のポジションも国名シリーズの某作品と一脈通じており、これまたクイーン的だ。
 それらに加えてさらに興味深い点がある。マッコールは、それぞれギル・ブルワーとリチャード・デミングがクイーン名義で発表した"The Campus Murders"(1969)と"The Black Hearts Murder"(1970)でも主役を務めており、本書は三部作の完結編という位置付けなのだが、その三部作全体を眺めてみると、ドルリー・レーン四部作にも似た仕掛けが施されていることに気付く。果たしてその仕掛けは、梗概を書いたホックのアイディアなのか、それとも三部作を指導したクイーンのアイディアなのか。いずれにせよ、三部作としての再評価が本書には必要だ。(村)